「中間まとめ」と「答申」の論点整理に向けたメモ

1998年11月7日 全国大学高専教職員組合

 

1.「大学改革」の基本的理念と、関連するキーワード

(1) 頻度を高めた「知」というキーワード

(2)「我が国」にかえて前面に出た「人類」というキーワード

(3) 一定の修正を受けた「科学技術創造立国路線」

(4)「大学改革の基本理念」に関連して

(5) 資源配分、条件整備に関連して

・資源の効率的配分のトーンがやや薄められ、「最大限の配慮」を「強く期待」

・具体性の乏しい、事務職員・技術職員の増員・待遇改善

・授業料・教育費負担について一定の言及

(6) 組織運営問題

・執行機関と審議機関の区分は堅持

・「独断専行」の批判を受ける部分については、一定の配慮

2. 「中間まとめ」と「答申」の比較対照

a) 各方面からの意見に対して、一定の配慮がうかがえる箇所

b) 中間まとめから変化のみられない箇所

c) 各方面からの意見に対して、表現に配慮が加えられたと考えられる箇所

d) 中間まとめの表現を明確化したと考えられる箇所

e) その他

 

1.「大学改革」の基本的理念と、関連するキーワード

(1) 頻度を高めた「知」というキーワード

例:「知の再構築」「知的リーダーシップ」「知的活動」「知的資源」等

(ただし、「中間まとめ」でも「知的資源」「知的創造力」「知的リーダーシップ」「未来を拓く新しい知の創造」「人類の知的資産の継承」「社会の知的分野の中核的機関」等の表現がみられる。)

《用例》

・「高等教育を取り巻く21世紀初頭における社会状況は現状から更に大きく転換し,人類にとって真に豊かな未来の創造,科学と人類や社会さらにそれらを取り巻く自然との調和ある発展等を図るため,多様で新しい価値観や文明観の提示等が強く求められるようになると考えられる。このため,その知的活動によって社会をリードし社会の発展を支えていくという重要な役割を担う大学等が,知識の量だけではなくより幅広い視点から「知」を総合的に捉え直していくとともに,知的活動の一層の強化のための高等教育の構造改革を進めることが強く求められる時代―「知」の再構築が求められる時代―となっていくものと考えられる。」(p.1/はじめに)

・「人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって、優れた人材の養成と独創的な学術研究の推進等の役割を担う大学等における教育研究の振興は、今後の発展に欠くことのできない未来への先行投資である」(p.3/はじめに)。

(「中間まとめ」での用例:「人々の知的創造力が最大の資源である我が国」「独創的な学術研究の推進により〜人類社会の発展に貢献」(p.13))

・「大学等の高等教育機関が、知識の量だけではなくより幅広い視点から『知』というものを総合的に捉え直していくとともに、それを踏まえて知的活動の一層の強化のための高等教育の構造改革を進めることが強く求められる時代となっていく」(p.4-5/第1章1(1))。

・「『知』の再構築が求められる21世紀初頭において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し」(p.30/第1章3(3))

(「中間まとめ」での用例:「21世紀において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し」(p.28))

 

(2)「我が国」にかえて前面に出た「人類」というキーワード

《用例》

・「人類の真に豊かな未来の創造に向けて『知』の再構築が求められる21世紀初頭において〜」(p.13/第1章3(1))

(「中間まとめ」での用例:「人類にとって未来を拓く原動力となる学術研究」(p.13))

 

(3) 一定の修正を受けた「科学技術創造立国路線」

《用例》

「人文・社会科学と自然科学の調和ある発展を図る科学技術創造立国を目指して、自ら独創的な知的資産を創造するとともに、新しい領域を開拓し、ひいては人類社会の発展に貢献していくことが求められている。」(p.9/第1章1(2))

(「中間まとめ」での用例:「特に諸外国以上に学術研究の推進と科学技術の発展は重要であり、科学技術創造立国を目指して、〜自ら知的資産を創造し、新しいフロンティアを開拓していくことが重要である。」(p.14)→:科学技術創造立国路線は消えず。しかし、理系偏重、人類的普遍的価値に立脚していないという批判(国大協「中間まとめに対する意見」の「理系重視の論調が強く、人文社会科学系の軽視とも受け取れる」)に一定配慮?

 

(4)「大学改革の基本理念」に関連して

・「課題探求能力の育成」に関する記述(中p.29/本pp.31-32)に、初頭中等段階の教育と高等教育とのつながり、学部教育と大学院教育とのつながりが付加される。

《用例》

「高等教育においては、『自ら学び、自ら考える力』の育成を目指している初等中等段階の教育を基礎とし〜」(本p.31)、「学部教育では、教養教育及び専門分野の基礎・基本を重視し専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うこと、専門性の一層の向上は大学院で行うことを基本として考えていくことが重要となる」(本pp.31-32)。また「工学教育の国際的通用性」(本p.33)が付加される。

 

(5) 資源配分、条件整備に関連して

・資源の効率的配分のトーンがやや薄められ、「最大限の配慮」を「強く期待」

《用例》

「人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって,優れた人材の養成と独創的な学術研究の推進等の役割を担う大学等における教育研究の振興は,今後の発展に欠くことのできない未来への先行投資である。このことを踏まえ,高等教育に対する公的支出を先進諸国並に近づけていくよう最大限の努力を強く期待するものである。」(p.3/はじめに)

・具体性の乏しい事務職員・技術職員の増員・待遇改善

「国立大学の事務組織については,近年,学生数が増加し,教育研究の進展により教員数が増加し,事務の内容も複雑多岐なものとなっているにもかかわらず,事務職員等の定員が減少している状況がある。大学における教育研究条件が低下することのないよう,人事,会計・財務の柔軟性の向上等事務の合理化を進め,専門化を図ることが特に重要である。」(p.110/第2章3.(1)2))

・授業料・教育費負担について一定の言及

「国公私立大学等を問わず,高等教育についての学生や親の家計負担は重いものとなっており,我が国は他の先進諸国と比較しても,国内総生産(GDP)や公財政支出全体に占める高等教育に対する公財政支出の割合が少ないなどの状況にある。このような状況及び教育への投資は我が国の今後の発展に欠かすことのできない未来への先行投資であることを踏まえると,今後,学部教育の質的向上,大学院の高度化・多様化等の改革を推進するために,高等教育に対する公的支出を先進諸国並に近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。」(p.126-7/第3章5.)

「国公私立大学等の授業料については,高等教育費に対する学生や親の家計負担が重くなっていることや,今後の進学率の上昇に伴い多様な所得層の学生が入学してくるようになることを考慮すると,各大学等において,民間資金の積極的導入等の財源の多様化と充実に一層努力するとともに,授業料については物価水準等を考慮した程度の改訂など,学生や親の家計負担が余り重くならないよう努力する必要がある。」(p.126-7/第3章5.)

 

(6) 組織運営問題

・執行機関と審議機関の区分は堅持

「学内の意思決定に関する基本的な枠組みとして,大学の運営と教育研究に関する機能分担と連携協力の関係を明らかにするという観点から,学長を中心とする大学執行部の機能,全学と学部の各機関の機能,執行機関と審議機関との分担と連携の関係,審議機関の運営の基本,事務組織と教員組織の連携の在り方等を明確化する必要がある」(p.98/第2章3.(1)2))

・「独断専行」の批判を受ける部分については、一定の配慮

「学長を中心とする大学執行部,評議会等の全学的な審議機関,学部長,学部の教授会等が,それぞれの機能分担を明確にした上で,学内において意見聴取や説明を十分に行い,それぞれの連携協力の下で質の高い意思決定を行い得るような基本的な枠組みを整備することが必要である。

 その際,大学により様々な工夫の余地はあるが,学長等の執行機関が,学内のコンピュータネットワークやホームページ,広報誌の活用,若手やベテランなど各年代の教員との懇談などを通じ,大学運営の諸問題について,広く教職員の意見を聞くとともに,学長等の考え方を十分説明することが必要である。

 また,学生は,教員等とは立場が異なるが,特に教育内容や学習環境などの関係の深い事項については,学習する側の立場の意見が重要であり,授業評価やアンケート調査などを通じ,広く学生の意向を把握するよう努める必要がある」(p.98/第2章3.(1)2))

 

2. 「中間まとめ」と「答申」の比較対照

a) 各方面からの意見に対して、一定の配慮がうかがえる箇所

1)「我が国発展の原動力となる優れた人材養成」(中p.15)→「我が国のみならず世界の発展の原動力となる優れた人材の養成」(本p.8/第1章1.(2)):一国の利害に偏重しているという全大教などの批判に配慮(しかし、「我が国にとって人材こそが今後の発展の原動力」(本p.71/第2章1.(2)4))という表現もある)。

2)「研究重視の意識が強すぎる一方で教育活動に対する責任意識が低い」(中p.6)→「一般に教員は研究重視の意識は強いが教育活動に対する責任意識が十分でない。」(本p.11/第1章2.)

3)「21世紀」(中)→「21世紀初頭」(本):控えめな表現に。国大協「中間まとめに対する意見」の 「21世紀の大学像の全体が描かれていない」という批判に配慮。

b) 中間まとめから変化のみられない箇所

1) ・「国際競争力の強化」(中p.12)→残る(本p.4/第1章1.(1)):「国際競争力の強化が重要な課題」(中p.5)という 認識は変わらず。

2)「高等教育機関と産業界との往復型社会」(中p.12)→残る(本p.6/第1章1.(1))

3)「卒業時における質の確保」(中p.33)→残る(本p.13/第1章3.(1))

4)「それぞれの理念・目標に基づき、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学、また学部中心の大学から大学院中心の大学など」(中p.16)→残る(本p.14/第1章3.(1)1))。

5)「より厳格な成績評価」(中p.21)→残る(本p.23/第1章3.(2))

6) 大学院:「21世紀に向けて科学技術創造立国を実現していく必要」(中p.26)→残る(本p.28/第1章3.(2)):大学院の機能が科学技術創造立国路線に位置づけられる点では変わらない。

7)「国立大学については、今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要があるが〜学部段階の規模の縮小も検討」(中p.27)→残る(本p.29/第1章3.(2)2))

8)「教育研究の国際競争力」(中p.28)→残る(本p.31/第1章3.(3))

9)「〜予算・定員・施設等の各種資源の効果的配分や再配置の問題、各種基盤整備の問題についても、大学が全学的見地から取り組み一個の組織体として意思決定を行う」(中p.79)→残る(本p.95/第2章3.(1)1))

10)「学部中心の自治は、個々の専門分野ごとの意思決定を重視するものであり、大学を外部の関与から守るための仕組みとして機能してきた」(中p.79)→残る(p.95/第2章3.(1)1))

c) 各方面からの意見に対して、表現に配慮が加えられたと考えられる箇所

1)「国立大学については、国費により支えられているという安定性や国の判断で定員管理が可能であるなどの特性を踏まえ、例えば理工系人材の養成など政策目標に沿った教育研究の実施、社会的な需要は少ないが重要な学問分野の継承、先導的・実験的な教育研究の実施、各地域特有の課題に応じた教育研究とその解決への貢献などの機能を果たすべきことが期待されている。このような機能を十分に果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき大学の実情に応じた改組転換を検討する必要も出てくるものと考えられる。」(中p.19)→「国立大学については、国費により支えられているという安定性や国の判断で定員管理が可能であるなどの特性を踏まえ、その社会的責任として、計画的な人材養成の実施など政策目標に沿った教育研究の実施、社会的な需要は少ないが重要な学問分野の継承、先導的・実験的な教育研究の実施、各地域特有の課題に応じた教育研究とその解決への貢献などの機能を果たすべきことが期待されている。このような機能を十分に果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき大学の実情に応じた改組転換を検討する必要も出てくると考えられる。」(本p.19/第1章3.(1)2))

2)「例えば科学技術創造立国に対応した理工系人材の養成など国家の政策目標に沿った教育研究の推進」(中p.20)→「計画的な人材養成の実施など国の政策目標の実現」(本p.20/第1章3.(1)2))

3)「21世紀において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し」(中p.28)→「『知』の再構築が求められる21世紀初頭において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し」(本p.30/第1章3.(3))

4)「21世紀において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し」(中p.28)→「『知』の再構築が求められる21世紀初頭において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し」(本p.30/第1章3.(3))

5) 高等専門学校に関する記述(中p.17-8)に「多様化・個性化を図っていく必要がある」(本p.17/第1章3.(1)1))という文言が加わる。

6)「独立行政法人化」に言及し、長期的視野での検討を求める(p.37/第1章3.(3))。

7) 産業界に対して、採用活動において大学の教育活動に配慮するよう要請(p.56-7/第2章1.(1)2))。

d) 中間まとめの表現を明確化したと考えられる箇所

*特徴:管理運営問題に集中

1)「大学全体、学部全体の幅広い視点に立った教員選考を進めるため、学長・学部長の関与の明確化することが適当である」(中p.90)→「全学的な人事の方針・基準を設定するに当たって、必要に応じて学長が大所高所からの方向性を示すことが適当である」「学部長が、上記の全学的な人事の方針・基準を踏まえて、教員の採用選考に関して必要に応じて意見を述べることが適当であるが、現行の仕組みでは、教員選考の過程で学部長の果たす機能が必ずしも明らかでないので、この点を明確化する必要がある」(本p.107/第2章3.(1)2))

2)「多元的な評価を行い」(中p.98)→「第三者評価システムの導入などを通じて多元的な評価を行い」(本p.115/第2章4.)

3)「大学の教育研究活動の透明性を高めるため、現在は努力義務である自己点検・評価の実施とその結果の公表を各大学の責務として位置付けることが必要である」(中p.100)→「大学の教育研究活動の透明性を高めるため、現在は努力義務である自己点検・評価の実施とその結果の公表を各大学の義務として位置付けることが必要である」(本p,117/第2章4.(1)):「責務」から「義務」に修正。

4)「第三者機関(例えば、大学共同利用機関と同様の位置付けの機関)」(中p.102)→「第三者機関は、大学共同利用機関と同様の位置付けとし、大学関係者の参画を得て運営を行い〜」(本p.120/第2章4.(2))

e) その他

1)「学外の第三者による検証を大学の責務として位置付けることが必要である」(中p.101)→「努力義務」(本p.118/第2章4.(1)):法的裏付けを持たせるということか。

・資源の効果的配分と評価:「評価に当たっては、研究評価、教育評価を通じて、数値等に基づく客観的評価によることが基本となるが」(中p.104)→「数値等に基づく客観的評価によることが基本となるが」が消える(本p.124/第2章4.(3))

2)「第三者機関(例えば、大学共同利用機関と同様の位置付けの機関)」(中p.102)→「第三者機関は、大学共同利用機関と同様の位置付けとし、大学関係者の参画を得て運営を行い〜」(本p.120/第2章4.(2))

3)「大学運営協議会(仮称)」については、設置を国立大学に限定(本p.112/第2章3.(1)3))。

 

 

(参考) 21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)

−競争的環境の中で個性が輝く大学−

目 次

はじめに…………………………………………………………………………………………1

第1章 21世紀初頭の社会状況と大学像…………………………………………………4

 1 21世紀初頭の社会状況の展望と高等教育…………………………………………4

   (1)高等教育を取り巻く21世紀初頭の社会状況の展望等

       −「知」の再構築が求められる時代−………………………………………4

   (2)我が国の発展と高等教育 ………………………………………………………8

 2 高等教育改革進展の現状と課題………………………………………………………10

 3 21世紀初頭の大学像…………………………………………………………………13

   (1)高等教育機関の多様な展開……………………………………………………13

   (2)高等教育規模の展望……………………………………………………………23

   (3)大学改革の基本理念 −個性が輝く大学−………………………………30

 

第2章 大学の個性化を目指す改革方策……………………………………………………38

 1 課題探求能力の育成 −教育研究の質の向上−……………………………………38

   (1)学部教育の再構築………………………………………………………………38

   (2)大学院の教育研究の高度化・多様化 ………………………………………59

 2 教育研究システムの柔構造化 −大学の自律性の確保−…………………………73

   (1)多様な学習需要に対応する柔軟化・弾力化

      −学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価−………………………73

   (2)大学の主体的・機動的な取組を可能とするための措置……………………83

   (3)地域社会や産業界との連携・交流の推進……………………………………89

   (4)国際交流の推進…………………………………………………………………92

 3 責任ある意思決定と実行 −組織運営体制の整備−………………………………94

   (1)責任ある運営体制の確立………………………………………………………94

   (2)大学情報の積極的な提供 ……………………………………………………113

 4 多元的な評価システムの確立 −大学の個性化と教育研究の不断の改善−…115

   (1)自己点検・評価の充実 ………………………………………………………116

   (2)第三者評価システムの導入 …………………………………………………120

   (3)資源の効果的配分と評価 ……………………………………………………124

 5 高等教育改革を進めるための基盤の確立等 ………………………………………125

 

別紙1 高等教育改革の進展の状況(概要)………………………………………………129

別紙2 高等教育における現状の問題点……………………………………………………132