大学審議会「答申」について ( 見解 )
1998年11月7日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
1.昨年10月31日文部大臣が、大学審議会に対して「21世紀の大学像と今後の改革方策について」諮問をおこなった段階から、全大教は「任期制法制化」にみられるよう教育・研究の充実・発展を阻む動きに対して、私たちからの「大学像」を徹底的に討議するなど、そのとりくみを強めつつ、「答申」の具体的な検討内容について注視してきた。とりわけ、今年6月30日、大学審議会が「21世紀の大学像と今後の改革方策について −競争的環境のもとで個性輝く大学−」(中間まとめ)を公表してから、全大教は、大学・高等教育に携わる大学人を結集する全国組織として、憲法・教育基本法の理念をふまえ、21世紀にむけて大学・高等教育を充実・発展させ、大学人の英知の結集による創造的改革を進めるための「基本的見解」(7月10日)を発表するなど、大学審議会に対する私たちの意見反映を求める運動を強化するため、全国的な討議をすすめ、私たち自身の「意見」も提出(8月11日)した。また、「意見」提出後も、問題の重要性に鑑みて、大学審議会に対して慎重な検討を要請してきたが、10月26日、大学審議会は「答申」をまとめ文部大臣に提出した。
2.全大教は、「中間まとめ」をきびしく批判して、大学審議会に対して「意見」を提出し、その反映を強く求めてきた。その要点は5点にまとめられる。
(1) 人類の福祉への貢献という普遍的見地から、真理と平和を希求する人間の育成と、普遍的で個性豊かな文化の創造をめざす教育の普及徹底、という憲法・教育基本法の精神の重視。
(2) 地球環境問題を初めとした様々な人類社会の「危機」ともいうべき事態のもとで、「学術・文化の中心」として、問題分析と社会への発信を行いうる大学の教育と研究の総合的発展。
(3) 上記を実現するための緊急の課題として、予算・定員等の裾野の広い教育・研究基盤の充実。
(4) 法制度の「改正」による大学の管理運営の画一的な規制にかえて、大学人の英知を結集した大学の創造的改革と充実。
(5) 「多元的な評価システムの確立」、とくにそれと連動した「資源の効果的配分」が大学・学部の再編・淘汰への「強制」につながる危険性。
3.この基本的立場に立って「答申」をみると、全体として、根本的な弱点や矛盾をもっている。一方、私たちの運動の結果として「意見」が一定程度反映した部分があり、それらを私たちは過大に評価することなく正確に評価し、今後の運動にいかすことが重要である。
(1)「はじめに」では、21世紀初頭における社会状況を、「我が国」という言葉にかえて「人類にとって真に豊かな未来の創造」と広く捉える視点に立ち、「『知』を総合的に捉え直していくとともに、知的活動の一層の強化のための高等教育の構造改革を進めることが強く求められる時代」とし、大学・高等教育の理念と役割を一定程度認識するとともに、「高等教育改革を進めるための基盤の確立等」では、「公的支出を先進国並みに近づけていく配慮が望まれる」との要望の立場から、「答申」では「公的支出を先進国並みに近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある」として公的支出の充実の必要性が強調されている。これらは、私たちをはじめ各団体の「意見」の一定の反映と見ることができる。
(2) 一方、重要な焦点である「組織運営体制の整備」については、「具体的には@大学運営をより充実した機能的なものとするため、学内の意思決定と機能分担と連携協力の基本的な枠組みを明確化する。A社会の意見を聴取し、社会に対して責任を明らかにする仕組みを整備する方向で法改正を含め必要な改革を進めることが適当である」としている。その上で、「それぞれの状況に応じた運営上の創意工夫」や教員人事について、学長等の「関与のあり方を明確化」から「学長が大所高所からの方向性を示す」など「答申」段階で一部表現の修正はあるものの、「中間まとめ」の基本的内容が堅持されていることは重大である。
(3) また、「多元的な評価のシステム」の中で「第三者評価機関」について、大学関係者の参画を得て運営を行うこと、その結果の各大学へのフィードバック、被評価者への情報開示と意見提出が明確にされたことなどは、私たちを含む関係団体の意見の反映と見ることができる。その一方、これら機関を利用しての「大学の自治」や「学問の自由」への介入に対する有効な「歯止め」が見られないことは重大な問題である。
(4) しかも、私たちが重要な問題の焦点の一つとしてきた「資源の効果的配分と評価」については、「第三者機関による評価が参考資料の一部として活用されることが考えられる」として「中間まとめ」からの表現の修正はありつつも、評価を資源配分に結びつける立場は変更されておらず、恣意的評価による大学・学部間の「格差」助長、大学の新たな再編・淘汰に結びつく危惧は依然として強く残されている。
(5) さらに、定員・予算等の条件整備については、近年ますます顕著になっている教職員の「多忙化」に対しても、事務職員についての「専門化」「全学の適正な職員の配置が必要」との記述に象徴されるように、具体的改善については何ら言及されていない。
4.文部大臣に「答申」がおこなわれたことにより、今後、この具体化にむけて、各大学に対して「指導」が強められるとともに、法制化にむけた準備がおこなわれると予測される。とりわけ「組織運営体制の整備」のための「法制化」は、大学の自治基盤の充実・発展を阻害するおそれが強い。その立場から「画一化」をはかる法「改正」・「法制化」には強力な反対運動を展開する。
同時に、私たちは、文部省の各大学への「答申」の具体化のための「指導」に対しては、予算・定員などの基礎的研究教育基盤の充実を求めたとりくみの強化とあわせ、各大学での徹底した討議と合意にもとづいた取り組みとして発展させる。
そのため「答申」の内容に関する分析と批判を全国的に行い、「答申」自体の問題点の改善を始め、現時点における国際的水準を示しているユネスコの「高等教育教職員の地位に関する勧告」を視野に入れて、大学人の英知を結集して「高い理念をもった21世紀の大学・高等教育」のため創造的・実践的に取り組むことを表明するとともに、今日の状況をふまえた壮大な運動を展開する決意である。